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不安や孤独を感じないフルリモート勤務のために私たちがやったこと ――フルリモ企業の対面型新人研修で築かれた同期の絆

2023年、ゆめみはひとつの課題に直面していた。

ゆめみはフルリモート企業として先進的な働き方を推進しているが、新入社員の中には「一人で働くことへの不安」を感じる声が増えていたのだ。

特に23年卒以降の新入社員や内定者たちからは「フルリモート環境の中で、どのようにして技術力を研鑽すればよいのか」「先輩や同期同士とどのように絆を築いたらよいのか」といった不安や懸念が寄せられていた。

たしかに、新米エンジニアやデザイナーにとって、自宅で一人、スキルを磨きながら仕事に向き合うことに不安を覚えるのは当然だ。

実際には、フルリモート企業と言っても、ゆめみでは全社員が集まる場や各ギルド(専門職ごとの組織)でのミーティングが頻繁に開催され、社員同士の関係性を作るのは難しくない。

だが、入社直後に先輩や同期同士とのつながりを強く持つ機会が不足していたのも事実だった。

この課題を真摯に受け止めたゆめみの人事スタッフたちは、「新入社員が同期から同志になるための最高の研修プログラム」を作ることを決め、約半年の準備期間を経て、ゆめみオリジナルの新人研修プログラムがスタートした。

たった5日間で「同期」から「同志」になれる新人研修プログラム

2024年4月1日――。初めての社会人生活が始まる日。

「フルリモート環境の会社って、どうなんだろう?」
「入社しても、周りと仲良くなれるかな…?」

青山にある研修会場に集められたのは、どこか不安げな表情を浮かべた24卒の新入社員たちだった。

定刻を迎えると、ゆめみの代表である片岡が姿を現した。新入社員たちは、これから始まる形式ばった入社式に備えるかのように姿勢を正す。

しかし、片岡の口から飛び出したのは、予想だにしない言葉だった。

「おつかれいっち!」

株式会社ゆめみ 代表取締役 片岡俊行

その瞬間、入社式特有の堅苦しさが一気に吹き飛んだ。新入社員たちの緊張が少しずつ溶けていくようだった。

「皆さんは、フリーランスとして個人で働く選択肢もあったはずです。しかし、企業に入り、仲間と共に集団で戦う道を選びました。だからこそ、この同期との絆を、何よりも大切にしてください」

片岡の軽やかな言葉と柔らかな笑みは、まるでこの先に待っている未来が明るいものであると教えてくれているかのようだった。

その後、最新の組織社会化理論に基づいたワークショップが始まった。内容は、24卒の新入社員が、少し先を歩んでいる先輩社員たちの「ホラーストーリー」を疑似体験するという少し変わったものだった。

これまでの先輩たちが実際に経験した失敗談――苦い教訓が詰まった物語に、新入社員たちは身を投じることになる。

ところで、なぜ、初日から先輩たちの失敗を疑似体験させるのだろう?

通常、新人研修の初日といえば、会社の経営理念や行動指針が話される場だ。だが、組織社会学の研究によれば、そうした一方通行のメッセージは組織適応において一過性の影響しかもたらさないとされる。そこでゆめみが選んだのは、あえてリアルな失敗談を聞き、疑似体験をすることで「組織適応」を促進させるという新しいアプローチだった。

このユニークな試みは、新入社員たちにとって大きな刺激となった。成功だけでなく、失敗こそが真の学びであることを肌で感じ、組織に順応するための現実的な知識とスキルを身につけるきっかけとなった。

2日目には、同期同士の絆を深める、さらに一歩踏み込んだプログラムが用意されていた。

その内容は、コーチング手法を応用し、一人ひとりが自分の価値観を振り返り、言葉にして棚卸しするワークだ。それぞれの個性と内面に触れることで、お互いをより深く理解し、ただの表面的な関係に留まらず、共通の価値観や違いを超えた絆を築いていく仕組みが取り入れられていた。

結果的に、わずか2日間という短い時間でありながらも、新入社員たちは同期とのつながりを深め、強い絆の第一歩を踏み出したのである。

これから始まる長い社会人生活の中で、この2日間の経験が、彼らの土台となっていくだろう。

フルリモートのテック企業なのに、なぜ奥多摩の奥地で合宿?

3日目から始まったのは、都会の喧騒を離れた奥多摩での宿泊型研修だった。

24卒の新入社員30名は、研修場所である改装された廃校へと向かう。その場所は、かつて未来溢れる小学生たちの笑顔と足音が響いていたが、今はゆめみという新たなフィールドでの活躍を期待される挑戦者たちを迎え入れようとしていた。

廃校で行われた研修は、一般的な新人研修とは一線を画していた。ここで行われる研修の目的は、ビジネスマナーやコミュニケーションなどのビジネススキルの習得ではない。

狙いはたったひとつ――同期のことをもっと知る、というものだ。

廃校の古びた教室に集まった24卒の新入社員たちは、まるで学校生活が再びよみがえったかのように、古い机を囲みながら話し合い、食堂で一緒に食事をし、夜には星空の下で語り合った。

特に新入社員たちの心に深く刻まれたのは、4日目に行われたチーム対抗で行われるゲーム形式の研修だ。

朝日が山々の間から昇る頃、全員でストレッチをしながら心と体を整え、その後、同期同士がチームを組み、さまざまな課題に挑んだ。

特に新入社員たちの心に強く残ったのは、4日目に行われたチーム対抗のゲーム形式の研修だった。

朝日が山々の間から昇る頃、全員でストレッチをしながら心と体を整えた後、人事スタッフからの指示が告げられた。

「これから皆さんには、山に登ってもらいます」

その言葉は、どこか挑戦心をかき立てるものがあった。

この研修の目的は「チームで協力しながら関係性を深める」こと。
その手段として、山を登る課題が用意されていた。

新入社員たちは仲間と協力し、計画を立て、できるだけ自分たちの足で頂上を目指す。最後まで頑張ったチームには、研修の締めくくりにささやかなご褒美も用意されているという。

新入社員たちはチームを組み、霊峰御岳山への登山に挑んだ。個々の力だけではなく、チーム全員が協力して目標に向かう中で、彼らは少しずつ仲間との絆を深めていった。

ところが、研修の途中で予想外の展開が待っていた。

「山登り、ちょっと大変じゃない?」

あるチームは、最終的な評価にこだわらず、青梅駅周辺でスイーツを楽しむ散歩を選んだのだ。

この予想外の行動は、ゆめみらしい「自由で自律的な精神」を象徴するもので、参加者全員にとっても印象的な出来事となった。ゆめみの人事スタッフも、予定していた賞とは異なる形で、このチームには特別賞を贈ることにした。

このチームのユニークなアプローチは今もなお新入社員の間で語り継がれている。

そしてその夜、新入社員たちは、これまでの研修ではなかなか見せなかった本音を、初めて心から語り合う時間を持つことになった。

それぞれが抱える夢や不安、これからの目標を共有するこの時間は、リモートワークが当たり前になった時代だからこそ、対面での交流の大切さを改めて実感させる場となった。

奥多摩に広がる静寂の中で交わされた率直な意見や感情は、単なる「同期」の関係を超え、これから共に成長していく「同志」としての意識をさらに強く育んだ。

総勢200名近い社員が、新入社員を迎えるーー全社挙げてのウェルカムパーティー

5日目の最終日の朝、まだ少し冷たい風が肌に触れる時間帯に新入社員たちはバスに乗り込み、静かに都内へと向かった。

疲れが体に滲み出ているが、どこか満足げな表情が浮かんでいる(そして、束の間の休息)。

新入社員たちが向かったのは、総勢200名の社員が新人を温かく迎えるウェルカムパーティーだった。普段はフルリモートで働くゆめみの社員も、この日は一堂に会し、新たな仲間を迎え入れる準備は整っていた。

照明が輝き、心地よいざわめきが会場を満たす中、パーティーは幕を開けた。

新入社員たちは次々とステージに呼ばれ、ゆめみの全社員の前で挨拶をする。もしこれが「同期」だけの集まりだったなら、今頃、不安や緊張に押しつぶされていたかもしれない。

しかし、新入社員はもはや「同志」である。

二泊三日の合宿を通じて、深い信頼と理解が築かれ、絆はすでに固いものになっていた。誰もが胸を張り、一人ひとり、しっかりと自信を持って挨拶を交わしていく。

実のところ、研修初日に、5日間も一緒に過ごすことに戸惑い、不平を漏らす者もいた。フルリモートの自由な環境に惹かれ、人との距離を置こうとする者も少なくなかったからだ。

しかし、理論に基づき綿密に設計されたレクリエーションプログラムが進むにつれ、誰もがその価値を見出し始めていた。

それはただの自己成長の場ではなく、仲間との共鳴を生み出す体験だった。

そして最終日の夜――クライマックスを飾ったのは全社員が集まる懇親の場だ。

普段は全国各地でフルリモートで働くゆめみの社員だが、この日は久々に対面で話をする者もおり、会場は歓声と笑い声で満たされていた。オンラインの画面越しでは伝わりきらない温かさと絆が、この場ではっきりと形になった瞬間だ。

新入社員たちにとって、この夜は単なる終わりではない。ここで感じた一体感と同志との絆こそが、これからの彼らの力となる。そして、その絆を胸に、彼らは新しいステージへと進んでいくのだ。

そして、その中でも一際テンションが高かったのは代表の片岡だった。片岡は「人生で一番の楽しみは、仲間との懇親の場だ」と言うほど、誰よりもその場を楽しんでいた。

疲れ切っていたはずの新入社員たちも、片岡の振る舞いに触発され、まるで新たなエネルギーを得たかのように、一層の輝きを放っていた。

会場に響く笑い声や温かな会話の中で、新入社員たちの関係性は一段と深まり、自然と互いをニックネームで呼び合っていた。その姿はまるで長年の友人同士のようで、5日前に出会ったばかりとは到底信じられないほどの親しみと信頼がそこにはあった。

「フルリモート環境で働くのは、不安だ」という声を耳にすることがある。それは、確かに部分的には正しい。エンジニアリングの仕事には、時に孤独や不安がつきまとうものだ。

だが、その不安はフルリモートに限った話ではない。どんな環境であろうと、不安はついて回るものだ。

しかし、他の企業と違うのは、ゆめみは決してその不安を決して野放しにしない、という点だ。自律・自学・自責――この3つの「自」を最大限に発揮できるよう、組織全体として多様な機会を用意し、お互いが一丸となって支援し合う。

フルリモート環境は、各々が専門性を最大限に発揮できるためのチャンスであり、制約ではないのだ。そして、このフルリモート環境を自分のものにできたとき、どこよりも成長できる環境がゆめみには広がっている。

フルリモートでありながら、まるでリアルな職場にいるかのような一体感 ―― それこそが、ゆめみの真髄であり、この環境の最大の魅力なのである。

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