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BRAND NEW YUMEMI - ロゴリニューアルとリブランディング 【背景編】

私たちゆめみは、2020年に創業20周年を迎えました。
それを期に「リブランディングプロジェクト」の一つとして、コーポレートロゴのリニューアルを行いました。

思い返してみると、いろいろ手探り状態で試行錯誤をしてきました。1年に満たない期間で、自分たちについて問い直し、社内外を巻き込みプロジェクトチームを作り、時世的なことも考えてフルリモートで進行するなど、簡単には語り尽くせません。

せっかくですので、プロジェクトメンバーが語る当時のプロセスや裏側のストーリーを、複数回の記事に分けてご紹介したいと思います。
初回は【背景編】と題して、プロジェクトが始まった経緯やその時に出てきた課題などをお伝えしていきます。
今回はゆめみのブランディングチームの3人が登場します。

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リブランディングプロジェクトのはじまり

そもそもの話ですが、リブランディングとは何でしょうか?ざっくりとした説明になってしまいますが、リブランディングとは「企業が今まで掲げてきたブランドを再定義をすること」です。

今まで作り上げてきた見え方や価値を問い直し、変化する時代の中にあっても自らの価値が最大の効果を生む状態にする。それが大きな目的です。

ゆめみは今回、コーポレートロゴのリニューアルを通じて、ブランドの価値を再定義することに挑戦しました。

数年前から温めてきたリブランディング構想

― 創業20周年というタイミングでのロゴリニューアルでしたが、どのような経緯でプロジェクトが始まったのでしょうか?

工藤:実は20周年というのはたまたまというか、そこまでウェイトが大きい理由だったわけではないんです。本当の理由は二つあります。
一つはゆめみという会社の歴史を少し遡るのですが、2014年に2B向けに展開していた二つの事業部門をスピンアウトさせたんです。その結果、ゆめみとしては受託開発やソリューション開発に選択と集中する状態になった。これが一つの転機でしたね。

二つめは、いまお話しをしたスピンアウトによって、ゆめみの社員数が60人くらいまで減ったんですが、今後はこの規模でやっていこうというのが当時の社内では共通認識としてありました。その状態が数年続いていたんですが、2018年に業界課題の根本解決に本腰を入れて立ち向かうのがゆみめのミッションなんじゃないか、という話が経営側で挙がってきたんですね。

そのためには、今後市場となる業界や顧客企業から第一印象で「信頼」や「期待」を想起いただく必要がある。また、事業拡大のために採用とマーケティング強化に取り組んだんです。様々な媒体への露出がある中で、各所で各人が使う単語も違えばメッセージも違っていて、さらにスポンサーをしている媒体でロゴが掲出されるのを見て、他社と比べてあまり刺さってこないということに気づいて、アップデートの必要性に確信を持ちました。

ただ一方で、2018年に組織そのものを変革し続けていくために「アジャイル組織宣言」を行ったんです。これによって社内に激しい変化が起こりました。同時に外に向けて透明性を持ったメッセージを発信するということを考えた時に、メッセージや提供価値も変化していくので、内向きの変化と外向きの影響について足並みを揃えていく必要があると考えました。それはもうロゴを変えようとかいう話ではなく、もっと根っこの部分、「会社って何だろう?」みたいなことを考えるタイミングと20周年が重なったんです。なので、単純にロゴを変えようというプロジェクトではなく、ブランドそのものを考えよう、という流れで始まりました

実際に水面下でブランディングを考えるというのは少数で粛々と動いていたんですが、2019年の夏か秋かに、代表が急に「ロゴ変えまーす」ってツイートしちゃったんです(笑)。当時はロゴを変えるか変えないかの議論もしていたですが、「あぁ、変えるのね。じゃあ、そっちもやらなきゃ!」という感じでドタバタして始まりました。

太田:私が入社したのは2019年の4月で、いま工藤が話したことの半分も理解していない状態で入ってきたんですけど、ちょうど企業規模を拡大していこうというタイミングでの中途入社でした。私はデザイナーなので、広報からバナーの作成依頼がきたりするんですね。その際に会社を対外的にどう見せたいかを聞いても答えが返ってこないことがあって、イベントによってキャッチコピーが変わっていたり、コーポレートカラーがなくて表現しづらいとか(笑)。デザイナーとしてアウトプットをする難しさを感じて、「ブランディングってどうなってるんだっけ?」というのが、本当に単純な疑問としてありました。

ちょうどその時期、工藤はゆめみのブランド、リブランディングに向き合っていたんですが、1年間くらい一人で抱え込んでいるような状態だったので、推進させるためにはパワーが必要だと感じたのと、私がもともとブランディングをやりたいという思いもあったので、一緒にやりましょう、という話になりブランディングチームにジョインしました。それが2020年の4月です。そのまま7月まで工藤と二人で他社事例をリサーチしたりしていたんですが、それでもまだスピードが足りず、栄前田に声をかけたんです。

栄前田:取締役がゆめみ社内で同じチームにいて、リサーチの段階から手伝っていたというか一緒に考えていたので、動きは知っていたんです。だけど、2020年の5月くらいまで実際にどんな動きをしているのかまでは把握できていませんでした。

工藤:一般的なブランド・ブランディングとは何か、というところからインプットをはじめて、ベンチャー企業に落とし込むにはどうすればいいか、さらにゆめみに適応させるとしたら何が必要か。そんなことを一人でフレームにまとめていたんです。それをもとにビジュアライズしていくという流れになったんですが、より波及させるために協力者を得たいと考えていて、内外との繋がりが強い栄前田に「入ってほしい」と伝えてプロジェクトに入ってもらったという感じです。

栄前田:基本的には何でもやります。声かかればやるよ、というスタンスであまり悩むことがないので(笑)。

太田:栄前田はゆめみが抱えていた課題に即座に共感してフィットしてくれた記憶があります。

栄前田:その時点ですでに複数のチームに関わっていて、ゆめみの中で何が足りなくて何をしていく必要があるのか見えてきたのが、ブランディングチームに加わるタイミングでしたね。ここでアクセルを踏まないと進まないと思って(笑)。

工藤:2019年に一人で潜って考え続けていたのは大切な時間で価値は高かったとは思いますが、スピードが出ていたわけではなくて、それが課題でもあったんです。次に太田が入ってくれたことで、デザイナー視点でのビジュアル事例のリサーチが一気に進んだり、さらに栄前田が入ってくれたことで波を大きくするというか巻き込む力を得て、三本の矢が揃ったな、と思いましたね。

栄前田:目指す方向性は同じだけど、そこに至るまでのプロセスと熱量をかけたいところが3人とも違ったので、役割分担の話をしたわけでもないのに、自然にそれぞれがやりたいように動けたというのもあって、とてもバランスが良かったです。

背景編_01

ゆめみの魅力をひたすら探る旅

― 今回のプロジェクトではビジョンやミッションに代わる言葉として「アトラクトポイント」が重要な意味を持つと伺ったのですが、これはどういう考え方なのでしょうか?

太田:2019年の10月、まだこのプロジェクトチームが発足する前ですが、工藤が社内でロゴデザインアイデアのコンペを開催したんです。でも、その時に何を表現したらいいのかわからなくて。ブランディングの観点で見た場合、会社のビジョンやミッション、フィロソフィーを前提にすると思うんですけど、ゆめみはそういったものが定まっていなかったんです。

もう一点、全社方針として集団心理を取り入れたくない、というのがありました。「ビジョン」や「ミッション」という言葉自体をどう捉えるかが、そもそもの問いとしてあったので、それらのワードを避けた上でゆめみとして大事にすることや、「ゆめみさん」はどういう性格なのかを突き詰めようという話になり、工藤と取締役2人、そして私の4人でゆめみの強みをひらすら書き出していきました。たくさん出てきた中から、ブランディングにおいて打ち出していきたいこととして選定したのが「アトラクトポイント」です。

工藤:補足すると、2019年の時に気をつけていたのが、全員CEOという意識を持った自律型組織、アジャイル組織というのを推し進める上で、変化し成長し続けるということです。会社の指針やトップの思想に対して人が集まるという構図になってしまうと、そこで固まって終了してしまう恐れがあり、変化し続けることを大切に考えました。その変化の向け先として社会にポジティブな影響を及ぼすことが成長である、と。

そう定義した場合に、会社のバリューはこうです、というふうに縛ることをブランドの軸に置きたくはなかったんですよね。全員とは言わないまでも、ゆめみがクライアントの方や、採用候補者の方からポジティブに捉えられている場合、どのような言葉で好意を表してくれるのかを抽出して、まさにそれが魅力的なポイントだよね、ということで「アトラクトポイント」と呼ぶことになったんです。ただ、誰が使い始めたんだっけな…。

太田:もともとは私がゆめみに入ることになったエージェントの担当の方に「ゆめみさんの面接にはアトラクトがありますよね」と言われたことで社内に入り始めたワードらしいんですけど、そこからたまに代表がslackなどで使うようになって少しずつ浸透してきた感じですね。今のところビジョンやバリューという言葉よりもぴったりだよね、となって工藤さんがつけた気がする(笑)。

工藤:そうだっけ(笑)? ただ、これも今は少し変わったんです。全社的にブランドブックを配ったんですが、その際に「アトラクトポイント」ではなく「成長因子」という言葉にして。ここはかなり悩みました。
アトラクトポイントは会社の“魅力的なポイント”という意味になりますが、ブランディング観点で考えた時に、自分たちでここが魅力的だよ、というのはおかしくないか、と。それは滲み出た結果であって、先天的な性質であったり学習した結果、周りからそう見えるようになったならいいと思うんですが、自分たち主語の場合に違和感を覚えました。

ただ、それを軸に変化し続けて成長していく基盤になるのであれば、ゆめみの内発的な言葉に変えた方がいいと思い、MIMIGURIさんに相談して「成長因子」という言葉にしたんです。
現時点では社内で「成長因子ってどういうこと?」みたいな意見が出ていたりはしますが、そういう問いもブランドが変化していくために必要な種だったりするので、いいかなと(笑)。

太田:少しややこしいんですが、「GROW with YUMEMI」というワードが「アトラクトポイント」とは別にあって、そこはブレないようしたいという考えが全社的にある気がします。もしかしたら、スローガンやフィロソフィーという捉え方に近くて、そこはみんなブラさないでいてね、というのが「GROW with YUMEMI」なのかもしれないですね。
あと、当初は「EVOLUTIONARY PURPOSE」というワードで、存在意義を対外的にも内向きにも出していた気がします。

工藤:成長って、生命体が生き延びるために一番必要な最小限の変化だと思うんです。クライアントに対して、家族や求職者に対して、どの文脈でも「成長する」という言葉はすべてに共通する部分で、ビジネスパーソンというだけではなく、ヒューマンとして生き延びていくために必要なこと。それをビジネスに結びつけて考えた時に、どんなことをして何を成したら成長と言えるのかは相手によって語り口が変わってきますよね。隣接して融合している部分の垣根を取っ払って抽出したものが「アトラクトポイント=成長因子」だと思っています。

背景編_03

想いが揃った3社での共創という選択

― 戦略はMIMIGURI、クリエイティブはSTUDYという座組みでプロジェクトが進みましたが、なぜ3社での共創という取り組みになったのでしょうか?

栄前田:そもそも太田の方でSTUDYの衛藤さんとの繋がりがありました。ただ、その時点で確定していたわけではないんですけど、私がDONGURI(現MIMIGURI)のミナべさんにお声がけするタイミングと、太田がクリエイティブについて衛藤さんにご相談するタイミングがほとんど同じだったんです。

太田:そうですね。2020年の5月くらいにはどういったパートナーと進めていったらいいか候補を出しながら探っていて、6月の段階でもまだ誰とどう組むかを決めかねていたんです。特に戦略部分はもっと意見が欲しいとは思っていたんですけど、金額感もわからないし、このプロジェクトの予算感もきちんと決まっていたわけではなく、同時並行でお声がけをしてはいましたね。MIMIGURIさんに関してはミナべさんがゆめみの組織体に興味を持って面白いと言ってくださったのが、一気に進むきっかけになって。

栄前田:工藤がブランディングチームの動きを社内で共有するタイミングがあり、状況を見ていてなんとなく動きそうな気配はあるものの、そこに至るまでにゆめみ社内でコミットし続けられる人がいない、とも感じたんです。このままではきちんと進まずに頓挫しそうで、社外で強力に伴走してくれる人をアサインした方がいいと思って。その時に浮かんだのがミナべさんだったんです。

ゆめみはトップダウン型の組織体系ではなく、少し特殊な進め方や伴走が必要になりそうだったので、そのあたりの文脈などを考えてもミナべさんに相談したいな、と。初回はミナべさん、工藤、私の3人で話をしてそこから動きが強くなっていった記憶があります。

太田:たしか、その時点でMIMIGURIさんとSTUDYさん双方に、進め方や座組みについて確認した気がします。役割を切り出されることにやりづらさなどを感じないか、とか。ヒアリングをした上で、お互いから連携して進めた方がいいとポジティブに回答いただいた気がします。記憶が曖昧ですが(笑)。

栄前田:意図して2社に相談をしたわけではなかったんです。結果的に3社での共創というプロジェクトになりましたが、そこまで意図的なものではありませんでしたね。

太田:選定していく上でのポイントとしては、ゆめみのトップダウン型ではない組織体や、その時点で課題として挙がっていた変化し続けるブランディングなどを含めて、ちょうどコロナ禍ということもあり、オンラインでのブランディングを一緒に探っていけそうな人という条件のようなものがあって、MIMIGURIさんもSTUDYさんも、面白そうだしぜひ一緒にやりたいとおっしゃってくれたのが、決め手になりました。

工藤:STUDYの衛藤さんと最初に打ち合わせした時に、今までのプロジェクトについて、どういう考えで進めたかを我々の目線でも分かるように噛み砕いて説明をしてくれて、コミュニケーションの性質がすごくゆめみと合いそうだなという直感が働きました。一発で衛藤さんいいなと思いましたね。
もう一つ、一文字とかひとつの記号で何かを表現したり特徴付けることに強みを持っていらっしゃったので、最初の方で話したロゴ課題(他社のロゴと見比べた時にあまり刺さってこない)解決の強力なパートナーになるとの思いがあり、期待感も持てました。

栄前田:話を聞きながら当時を思い出していて、どうして我々は面倒な道を選んだのか考えていたんですけど(笑)。本来、1社と組む方がコミュニケーションコストは低くできるわけじゃないですか。なのにどうして3社での共創だったのかといえば、単純におもしろそうだったからじゃないかなと。STUDYさん、MIMIGURIさんと一緒にやるというプロセスを通じて何かシナジーが生まれそうだな、楽しそうだな、ということで座組みを決めたのもありましたね。

太田:「この人たちと一緒にやりたい!」という思いが揃った感じです。

栄前田:そうですね。その思いを持って依頼をしました。

工藤:うちの会社はやりたい人の意見を尊重するような社風でもあるので、自分たちがエキサイトしていたら誰も止めないですし、今回は「よし、この直感を信じよう!3社でいくか!」みたいな感じになって、そこからのスピードは早かったですね。もちろん直感を信じるとはいえ、きちんと社内に説明できるロジックは持っていましたけど(笑)。

背景編_02

ロゴの開発で実現したかったこと

― このロゴ開発にあたり、ここは譲れないという想いや実現したいことはどのようなことだったのでしょうか?

工藤:実現したかったことは三つあります。一つは何かしらのイメージと知覚、感覚を固定させないこと。例えば「プシュッ」だと商品A、「シュワシュワ」だと商品Bかな、とか。感覚とブランドを固定するというのは消費材などのブランドにとってはとても良いやり方だと思いますが、ベンチャー企業はどんどん変化しますし、特にゆめみは変化を求める会社ということもあり、固定が起こった瞬間に成長が止まると思ったんです。なので、イメージと知覚、感覚を固定させることは絶対に避けたかった。

二つめが、社員の集団心理を撤廃させるということ。一般的にバリュー経営で使われる、ミッション、ビジョン、バリュー、フィロソフィー、スローガンのような言葉が出たら消すということを繰り返し、それらの言葉を使わないという縛りを設けました。

最後は、「ゆめみ=創業者の片岡」というのがゆめみ社内でも固定化されていたので、それを切り離すために、片岡には創業者としての意見を出してもらってはいる、という意味づけを行うことを徹底するようにしました。ゆめみという存在をみんなのものにしてそれが変化していくものにするという、そういうプロセスも含めた形そのものをブランドにしたかったんです。
場を作るためのブランドにしたかったですし、少しずつ形になってきていると思っています。

太田:まだ向き合っているところではありますが、最終的に達成したいことは、ゆめみという会社の印象や認知が変わっていることですね。ゆめみという組織のことで言うと、全員を巻き込むというか。トップダウンで決めるわけではないので、プロセスを見える化して一緒に作った感が生まれるのは大切にしたいと思っています。それはやりたいことというよりも、やらなきゃいけないなと。

栄前田:個々ではみんなすごく高いポテンシャルを持っているし、ユニークなパーソナリティを持っているとゆめみに入ってから今までずっと思っていて、ただ、全員でどこに向かおうとしているのかが本当に見えなかったんですよね。ホラクラシー(社内に役職や階級といった上下関係が存在しないフラットな状態)的な組織のゆめみでは、向かう先が見えにくいですし、みんながみんな強い意思を持って前に進めるわけではないので、機会を生んで波を起こしたかった。そのためにリブランディングはいいタイミングだと思った、というのは正直あります。
気持ちや思いの部分では、やっぱり全員プロジェクトに入って欲しい、みんなが参加できる場を作りたい。それは今でも持っていますね。

太田:結局は、みんなに問いを生ませたい、というのがあったと思います。

今回はゆめみリブランディングの「背景編」として、プロジェクトが始まった経緯や、パートナーをどのように選定したのか、そもそもこのプロジェクトを通じて実現したかったことは何か、ということを記事にしてみました。

次は「戦略編」です。プロジェクトの根幹になる戦略がどのようにして、組まれていたったのか。そのあたりを主にMIMIGURIさんに語っていただこうと思います。

最後までお読みいただきありがとうございました。
リブランディングを考えてる方たちにとって、少しでも参考になる部分があれば幸いです。
それでは、次回の記事もお楽しみに。